DeNA(2432)株価分析レポート:2026年3月期上期決算で見えた“構造転換”
ディー・エヌ・エー(DeNA)は、2026年3月期上期で営業利益249億円、EPS200円超を達成。
これは前期通期実績(特損除外ベースEPS177円)を半年で上回る水準であり、高収益構造への転換が鮮明となりました。
本稿では、過去記事「DeNA 2025年3月期3Q決算分析」での考察を踏まえつつ、
直近の2026年3月期2Q決算および決算後PTS株価(11/10時点:2,799.5円)をもとに、
最新のバリュエーションと今後のシナリオを整理します。
1. 2024〜2026年度 業績サマリー
| 決算期 | 売上収益 | 営業利益(IFRS) | EPS(円) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 1,641億円 | 290億円 | 177(特損除外後) | 特別損失(43億円)除外ベース |
| 2026年3月期1Q | 417億円 | 138億円 | 100.5 | ポケモンTCG Pocket効果 |
| 2026年3月期2Q | 414億円 | 111億円 | 106.1 | 高収益構造継続 |
| 2026年3月期上期計 | 831億円 | 249億円 | 206相当 | 前期通期を半年で超過 |
2. セグメント別の動向
- ゲーム事業:『Pokémon Trading Card Game Pocket』が海外売上の約6割を占め、収益基盤を形成。MAUは3,900万→3,000万と高水準維持。
- スポーツ事業:ベイスターズ中心に2Qも営業利益50億円と高水準。スマートシティ連携による拡張性あり。
- ライブストリーミング:収益性重視運営により黒字転換を維持(1Q+10億円→2Q+13億円)。
- ヘルスケア・メディカル:「Join」起点に地域DX支援を拡大。非連続成長余地あり。
- AI新規事業:AI-ALL-IN戦略により、20件超のAIプロジェクトを展開。効率化+新規収益源を模索。
3. 財務指標と株価水準
| 指標 | 2025期 | 2026期(予想) | コメント |
|---|---|---|---|
| EPS | 177円(特損除外) | 300〜350円見通し | 下期減速してもEPS300円は堅い |
| ROE | 7% | 目標8%超 | 資本効率を意識した経営へ |
| PER(株価2,799.5円換算) | 15.8倍 | 8.0〜9.3倍 | バリュエーション上は割安水準 |
| 営業利益率 | 18% | 25〜27% | 構造的な利益体質へ |
11月10日時点のPTS終値は2,799.5円。
この水準でも来期EPS300円を基準に見れば、PERはわずか9倍前後となり、再評価余地が大きいといえます。
なぜDeNAの業績予想は「保守的」なのか?
2026年3月期のDeNAは、上期の時点で前期を大幅に上回る好業績を上げています。
それにもかかわらず、会社計画(業績予想)はやや控えめに見えます。その背景には、以下のようなリスクコントロール型の見積もり方針が存在します。
① 『Pokémon TCG Pocket』のボラティリティを織り込み
ゲーム事業の主力である『Pokémon Trading Card Game Pocket』は、海外課金比率が6割を超えるグローバルタイトルです。
為替やイベント施策、ユーザー動向など変動要因が多いため、DeNAは予測の不確実性を理由に保守的に見積もっていると明言しています。
「各ゲーム内施策の影響等については合理的な予測が困難なため、保守的に見積もっています」
(2026年3月期1Q決算説明会・Q&Aより)
② スポーツ事業の季節性(オフシーズン)を考慮
ベイスターズを中心とするスポーツ事業は、春〜夏のオンシーズンに利益が集中し、秋〜冬に減少します。
この季節要因による下期減速を前提に、上期の好調さをそのまま年率換算しない慎重な設計を採っています。
「下期はスポーツ事業がオフシーズンとなることは留意が必要」
(2026年3月期1Q決算説明会・Q&Aより)
③ AI・スマートシティ関連など中長期投資費用を織り込み
2026年度から全社方針として掲げた「AI-ALL-IN戦略」に基づき、AI導入やスマートシティ事業への投資を加速中。
これらは短期的には販管費増・先行投資負担として計上されるため、会社側はこれを前提に慎重な利益予想を設定しています。
④ 「達成確度重視」への方針転換
前期(2025年度)は『Pokémon TCG Pocket』の大ヒットで想定外の上振れを経験。
その反省を踏まえ、今期は“確実に達成できるガイダンス”を意識しています。
IRでも「お出しした業績予想についてはしっかり達成していけるように」と強調しており、
過度な期待値をコントロールする姿勢がうかがえます。
まとめ
要因カテゴリ内容影響 ゲーム事業『Pokémon TCG Pocket』の変動要因を考慮利益予想を控えめに設定 スポーツ事業オフシーズンを前提に見積もり下期の利益を過小計上気味 新規投資AI・DX費用を計上営業利益率を意図的に抑制 経営姿勢達成確度を最優先上方修正余地を確保
つまり、現在の会社計画は「下方リスクを排除した安全ライン」であり、
実際の実力値(EPS300円超)を下回る“慎重すぎるガイダンス”といえます。
4. EPS300円は“堅いライン”
下期の3Q・4Qはスポーツ事業のオフシーズンで減益傾向が想定されるものの、ライブ事業の黒字継続と新作ゲームリリースにより、EPS300円前後はほぼ確実視されます。
| 期 | 純利益見込み | EPS試算 | コメント |
|---|---|---|---|
| 3Q | 70〜90億円 | 約63〜80円 | スポーツ一服期 |
| 4Q | 80〜100億円 | 約72〜90円 | 野球開幕+新作寄与 |
| 通期計 | 380〜420億円 | EPS 340〜370円 | EPS300円が実力値 |
5. 投資家視点の評価
✅ ポジティブ要因
- 海外課金比率60%のグローバルゲーム展開
- AI導入による開発効率化・コスト削減
- スマートシティ・ヘルスケア領域での新収益源
- ROE8%目標を掲げた資本効率経営
⚠️ リスク要因
- 主力ゲームのMAU鈍化による売上反動
- 新規タイトル遅延リスク
- AI・DX投資による短期費用負担
総括
DeNAは2026年3月期で「利益構造の転換点」を迎えた。
上期でEPS200円を超え、下期に減速してもEPS300円超はほぼ確実。
特損を除いた実質収益力を踏まえれば、現在のPTS株価2,799.5円は
実力PER 9倍前後の割安ゾーンに位置している。『ポケモンTCG Pocket』によるグローバル収益基盤に加え、
AI・スマートシティ・ヘルスケアの新領域が加わることで、
今後の中期ROE改善と株価上昇余地は十分に見込める。
※本記事は投資助言を目的としたものではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。

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