第一三共の株価は下がっても“買い”と考える理由|エンハーツ・ダトロウェイが示す成長の確信

第一三共(4568)の株価は最近軟調気味ですが、決算資料を並べてみると売上の成長ドライバーはむしろ鮮明になっています。特に抗体薬物複合体(ADC)の「エンハーツ」と「ダトロウェイ」。どちらも適応領域のがん種で罹患率や化学療法実施率が高く、今後数年かけて収益化が進むと考えられます。本記事では、最近3年分の決算資料と臨床試験の記載をもとに「なぜ今の株価でも買いで見られるのか」を整理します。

目次

1. 売上は着実に成長──エンハーツとダトロウェイが主役へ

2025年度第2四半期(4〜9月)の第一三共の連結売上収益は9,754億円(前年比+10.5%)で、前年からの増収を維持しています。その内訳を見ると、オンコロジービジネスが大きく伸びており、特にADC製品のエンハーツとダトロウェイが成長の中心になっています。

エンハーツは前年同期比でおおむね+20%前後の伸長、ダトロウェイは上市初期にもかかわらず400%を超えるような立ち上がりを示しており、「循環器からオンコロジーへ」という会社の描いてきた転換が決算上でも確認できる形です。

2. 利益が伸びにくいのは“投資フェーズ”だから

一方で、同じ四半期のコア営業利益はやや減少しています。これは「業績が頭打ちになった」からではなく、提携先へのプロフィットシェア(利益分配)が増えていることと、DXdシリーズへの研究開発投資を前倒ししていることが主因です。

つまり現状の第一三共は、売上が立ち始めたADCをさらに世界で広げるためのコストを先に計上している段階であり、会計上の利益が数年後ろにずれて見える構造になっています。ここを「利益が出ていないから評価しない」と見るか、「今は育成期で、売上はもう見えている」と見るかで投資判断が分かれます。

3. 臨床試験の結果が市場規模を裏打ちしている

今回の決算資料では、すでにいくつかの重要な臨床試験の結果が示されていました。ここが「今後数年で利益が膨らむ」と見る根拠になります。

3-1. エンハーツ:胃がん2次治療で好成績

HER2陽性の進行・再発胃がんの2次治療を対象にした第3相試験(DESTINY-Gastric系)では、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)で有意な改善が確認されています。胃がんは日本国内だけでも年間およそ13万人が罹患する比較的多いがん種で、進行例・再発例では化学療法の実施率も高い領域です。ここでエンハーツが「グローバルな標準候補」として位置づけられることは、そのまま市場の厚みに直結します。

現段階では保険適応が通っているわけではありませんが、今後HER2陽性胃がん患者さんの2nd-ラインにおける標準療法になる可能性が示唆されます。

そうなれば、エンハーツの売上は更に増えるものと考えられます。

3-2. ダトロウェイ:TNBCの1stラインで有効性を示したことの意味

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は乳がん全体の15〜20%を占め、再発・転移後はほぼ全例で薬物療法が必要になる“薬がよく使われる領域”です。乳がん自体が日本人女性で最も多いがんなので、母集団の多さ×化学療法実施率の高さがそのまま市場になります。

ここでダトロウェイが一次治療で有効性を示したということは、「早いラインからADCを使う」選択肢が現実になってきたということです。これは単に1製品の売上が増えるという話ではなく、第一三共が持っているADCプラットフォーム全体の価値が上がることを意味します。

ダトロウェイがTNBCの1stラインとして承認されれば、多くの患者さんに使用される可能性がとても高いです!

4. 株価水準をどう見るか(2025年11月7日時点:3,368円)

本日時点(2025年11月7日)の終値は3,368円。会社が開示している2025年3月期のEPS(1株利益)は155.96〜160.72円付近なので、単純計算の予想PERはおよそ21倍前後になります。

製薬セクターの平均PER(15〜20倍)と比べるとやや高めに見えますが、ADCという成長ドライバーがすでに立ち上がっていること、そして乳がん・胃がんといった「患者数が多く、かつ化学療法が日常的に行われる領域」を取っていることを考えると、このプレミアムは十分に説明可能です。

株探の記載には、「第一三共は2026年3月期第2四半期で連結最終利益が前年同期比10.8%減の1,308億円となり、通期予想を3,000億円から2,880億円へ下方修正」と記載されています(2025年10月31日付)。

確かにこの発表を受けて「経費がかさんで減益」「下方修正」という見出しだけを見れば、一時的に売りが増えるのは想像に難くありません。研究開発費やプロフィットシェアが増えており、利益率の悪化が短期的に株価を押し下げる要因になっているのも事実です。

実際、この3年間の株価推移を振り返ると、PERが20倍を下回った局面はほとんどありません。唯一の例外は2025年4月7日前後で、いわゆる「トランプ関税」関連の報道を受けて株価が一時3,050円近くまで下落したときです。しかしその後はすぐに買い戻され、数日で3,300円台まで回復しました。

この動きからも、市場が第一三共を「PER20倍割れ=割安水準」と認識していることが読み取れます。短期的に材料で揺れることはあっても、エンハーツやダトロウェイの売上成長を織り込む動きが下支えしているといえるでしょう。

確かに足元では経費増加と研究開発投資によって減益・下方修正となっていますが、数年スパンで見れば売上の増加が先行し、利益も後から追いつくと考えます。私はむしろこの局面を“次の上昇期への助走期間”と捉えています。

5. 今が“静かに仕込める”タイミングだと考える理由

  • エンハーツ・ダトロウェイともに、適応領域のがん種の罹患率が高い
  • そのがん種での薬物療法実施率も高く、実需につながりやすい
  • 決算上はコストが先行しているため利益が見えにくいだけで、売上の伸びはすでに出ている
  • ADCは横展開が効くので、新しい標的のデータが出るたびにプラットフォーム全体の価値が上がる

つまり、株価が調整気味のいまは「業績が見え始めた成長株を安いところで拾える」タイミングになりやすい局面です。決算資料をきちんと読むと、それが単なる期待ではなく“患者数×治療実施率”という医療側の現実に裏付けられているのがわかります。

まとめ

第一三共は、短期の利益だけを見ていると「成長性が止まりつつあり、減益傾向」に見えます。しかし、3年分の決算と臨床試験の記載を並べると、エンハーツとダトロウェイという2本のADCが、患者数の多いがん領域で順当に実需を取りにいっている最中だということがわかります。だからこそ、いまのPER21倍前後という水準は、将来の収益成長を前提にすれば許容できる——というのが今回の結論です。

この記事が、医療現場で働きながら投資もしている方の「なぜ第一三共なのか?」に対するひとつの答えになればうれしいです。

本記事は筆者の個人的な見解に基づくものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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